第2回ヱビスビアカレッジ講義レポート
第2回ヱビスビアカレッジはホップの講義!
ヱビスビアタウンの大人気コンテンツの住民学びの場、ヱビスビアカレッジが10月11日(火)に第2回を開講しました。ヱビスビールの香りと苦味と殺菌効果を高める、ビールにとってなくてはならない存在のホップについて、講義を行った様子をご紹介いたします。
登壇者プロフィール
- 1972年北九州市生まれ。多摩美術大学卒。国内酒類メーカーから外資メーカーを経て、2014年サッポロビール株式会社に入社。2015年9月より、宣伝室のデジタル担当。そして、2021年4月からはヱビスブランド内でメディアプランニングを担う立場になり今に至る。デジタルメディアを主要フィールドとし、複層的メディアプランニングから分析設計、イベントPRまで多岐にわたる業務を担当。直近は、コンテンツコミュニケーション、ファンコミュニケーションに力点を置いたプランを展開中。
- 大阪出身。サッポロビールへ入社してから一貫してサプライチェーンマネジメント(SCM)部門で製造計画・需給調整・輸入業務を経験、その後、購買部へ異動し原料調達担当に。ホップ調達担当として、200品種以上のホップと米国・欧州・オセアニアのホップサプライヤーを相手に関西人の厚かましさと大阪弁風のブロークンイングリッシュで日夜奮闘中。最近は、サッポロビールに最適なホップを探す旅の途中、美味しい料理に出会うので、食べ過ぎちゃうのが悩みの種。
- 大阪出身。北海道の大学へ進学し、広大な自然のもとで農業の難しさと奥深さを学ぶ。サッポロビールへ入社してからは原料開発研究所でホップの育種や醸造用ブドウの生産業務に従事し、2022年から欧州ホップのフィールドマンを兼務。これまで嗅いだことがないようなホップと出会うことに喜びを感じ、そんなホップを世に広めていくことが今後の目標。
- 長崎県出身。関西の大学へ進学し、大学時代は微生物の研究に取り組んだ。サッポロビールへ入社後は、研究・開発部門に勤務し、ビールの泡の研究や商品・開発を経て、本年9月からビールの本場ドイツ ミュンヘンの大学でビール醸造学の勉強をするために留学中。ドイツだけでなくヨーロッパの酒類文化に浸ることで知見を広め、帰国後においしいビール造りに貢献することが目標。
「ホップの秘密に迫る」第2回ヱビスビアカレッジ
第2回のヱビスビアカレッジは、10月11日(火)の20:00~21:00にヱビスビール記念館から。「サッポロビール社員がドイツから生中継!ヱビスの香り・味の決め手『ホップ』の秘密に迫る」と題して開催されました。ヱビスビールのホップの故郷ドイツから3人のサッポロビールやヱビスビールを支えるプロフェッショナルたちが登壇。彼らの仕事の裏側に迫りながら、途中サプライズでサプライヤーも登場し、熱いホップ事情の談義が交わされた贅沢なひとときとなりました。
講義では3度注ぎのレクチャーもありましたが、ここではビールの味や香りを決定づけるホップに焦点を当て、現在そして未来に向かう「ホップとそれを支えるプロたち」の活躍を紹介します。ヱビスビールの味わいを裏側で支える仕事について理解を深めたうえで、さらに動画を観ればより一層ヱビスビールが味わい深くなることでしょう。
ビールの苦味と香りを付与するホップ
まずは、ヱビスビールの心臓部分と言っても過言ではない「ホップの基礎知識」を、サッポロビール 生産技術本部製造部の浅井 梓さんからお話を聞きました。
「ホップはアサ科の宿根性多年生植物です。冷涼な気候が栽培に適していて、栽培地として北海道はもちろん、ドイツやチェコ、アメリカなどがあります。雄株と雌株がありますが、ビールには球花(きゅうか)と呼ばれる雌株の花が使われています。ホップが時計回りにつるを巻きつけながら伸びて7~8メートルほどの高さまで成長する様は圧巻です。これを8~9月につるごとトラクターなどで収穫し、葉や茎などの夾雑物を取り除いて球花を選別します。この球花こそが、ビールづくりで大きな役割を果たすのです」
浅井さんによると、ホップにはビールの香りや苦味を付与するほか、泡持ちをよくしたり、微生物の増殖を抑える抗菌効果、そしてビールを清澄する作用があるという。その役割を担うのが、球花の中にある「ルプリン」と呼ばれる組織です。
「ホップが持つ苦味のもととなるのが、このルプリンに含まれるα酸(アルファ酸)と呼ばれる成分。α酸自体にはそれほどの苦味はありませんが、熱することでイソα酸に変化すると、爽快な苦味を発するようになります。つまりイソα酸となるα酸が多ければ多いほど、ビールの苦味成分も増すということです」
そして、毎年世界中から新しく出ている300種以上もあるホップの品種には大きく3つのタイプに分けられるといいます。
「ファインアロマホップ」
香りや苦味が上品なホップ。ほかのアロマタイプやビタータイプに比べて穏やかで上品なことが特徴。チェコのザーツが代表的。
「アロマホップ」
ホップの香りを重視したホップ。ドイツバイエルン産のホップはアロマホップに該当。
「ビターホップ」
ファインアロマやアロマタイプが香りを重視しているのに対し、苦味成分が多いホップ。
これらのホップを仕込の煮沸という工程で投入するが、ビールの商品特性に合わせてホップの配合レシピを考える。香りを際立たせたい場合は煮沸の終了間際に投入するなど、ホップの配合や投入のタイミングを調整することで、その商品ならではの香味を実現しています。
地域によってもホップの特性は異なる。ホップの育種も手がける古川雄登さんによると、ドイツでは伝統的な品種が広く栽培されているが、日本では育種開発された個性的な品種をすぐに展開できるのが特徴だという。
サッポロビールは前身の開拓使麦酒醸造所で「麦とホップを製すればビイルとゆふ酒になる」という言葉が掲げられて以来、自ら品種改良を行いビールに適したホップと麦を開発してきました。大麦とホップの両方を育種しているビールメーカーは、世界でもほとんど例をみません。なかでも北海道空知郡上富良野町生まれの“ソラチエース”は、その特徴的な爽やかな香りで世界を驚かせました。サッポロビールならではの代表的なホップと言えます。
約2年ぶりに行われた「ホップチェック」では、ホップ買い付けを行う視点、フィールドマンとしての視点、醸造家としての視点で、ビールの味が決まる数百トンものホップをチェックします。
それでは、ドイツから生中継で出演した、サッポロビールのホップを支える3名の仕事にクローズアップしてみましょう。
ホップを支えるプロフェッショナル① フィールドマン
「選りすぐりの原料だけで、おいしいビールをつくる」という信念のもと、“畑”から徹底的にこだわり、原料の研究を続けてきたサッポロビール。
現在でも大麦とホップの育種を行い、協働契約栽培する世界でも稀有なビール会社として原料研究を続けています。そんな協働契約栽培を支えるのが、フィールドマンと呼ばれるプロフェッショナルです。
フィールドマンとは、原料の育種、栽培、加工の専門家のこと。原料を知り尽くしているからこそ世界各地の生産者とコミュニケーションを取りながら安全・安心・高品質な原料の調達を実現しています。
そんなフィールドマンのひとりでもある原料開発研究所 研究員兼購買部 フィールドマン(欧州担当)の古川さんは、学生時代に農作業のバイトを通じて生産者とコミュニケーションをとったことがきっかけにサッポロビールに入社。以来、原料開発研究所でホップの育種や醸造用ブドウの生産業務に従事し、2022年から欧州ホップのフィールドマンを兼務しています。
「ホップの栽培は天候など自然の影響を受けやすいので、サッポロビールでは、原料調達拠点を世界各地に分散させることで、良質な原料を安定的に確保できるようにしています。フィールドマンはホップに適した天候を理解していて、気候変動などで原料の品質や収量に問題が生じないかケアしています。ホップチェックでは、香り、品質はもちろんのこと、農薬の散布記録を見ながら適切に散布されたかを確認することが一番重要な任務です。
ホップ生産者さんと試行錯誤してコミュニケーションを取りながら契約数量を達成し、つくったビールをサプライヤーにフィードバックしたときに笑顔が見えることにやりがいを感じますね」
最後に今後の目標について聞くと、「これまでにないような香りのホップを育種して、そのホップを世に広めていくこと」と話してくれました。
ホップを支えるプロフェッショナル② ホップ調達担当
ホップ調達の仕事では、協働契約栽培するサプライヤーとの交流があげられます。生産者と信頼関係を築きながらいっしょに原料をつくっていく原料調達システムこそがサッポロビールならではの独自性。次なる高品質のホップを目指して情報交換はもちろん、生産量や品質、コストパフォーマンスに合う価格など交渉をしていきます。
現在、購買部ホップ調達担当の松本 憲昭さんは、米国・欧州・オセアニアのホップサプライヤーを相手に、「関西人の厚かましさと大阪弁風のブロークンイングリッシュ」で日夜奮闘中。コロナ禍では現地には行けず、オンラインミーティングで天候などの状況を確認しつつ、ホップサンプルを送ってもらい、品質確認を行っていました。「お客さまに当社製品を切らさずにお届けするために、原料を調達し、醸造部門に渡すことが最大の任務です。やはり、現地の農家さんの元へ伺って、これだけのホップが必要なんだと熱意をもって訴えることが一番大切ですね。そうすると、農家さんもがんばって期待に応えてくれるのです」と、人の手で作られる農産物は、ダイレクトなコミュニケーションが大事だと強調します。
ホップを支えるプロフェッショナル③ 生産技術本部 製造部
苦味の付与に加え、香りをデザインする役割も持つホップ。300種以上あるホップをどのくらいの量をどのタイミングで投入するかによって、ビールの味わいが大きく変わる、と生産技術本部 製造部の浅井 梓さんは言います。
「求めるヱビスビールならではの香味を守り続けるため、また新商品をつくるために苦味と香りのデザインをする。ホップの特徴を理解し、自分の好きなものを見つけ、個性を知ること。そして、自身やお客さんの知識や体験さえも表現するのが醸造技術者の使命です」
ちなみにヱビスビールに使われるホップは、「ドイツ ハラタウ産のアロマホップ」。同じホップの品種であっても農産物は土が違うと香りに違いが出たりするので、ホップチェックでは、安定した品質、香り、苦味にばらつきがないようセレクションします。
実際にホップ選定して、来年のビールを担うことに確かなやりがいを感じていながら、今年10月から本場ドイツのミュンヘンの大学でビール醸造学を学ぶという浅井さん。その理由について、「ドイツだけでなくヨーロッパの酒類文化に浸ることで知見を広め、帰国後においしいビール造りに貢献することが目標です」と力強く語ってくれました。
おいしいビールをつくるために、多くの人たちが注ぐ情熱を学ぶことができた1時間。いつものヱビスの味も格別に違って味わい深かったのではないでしょうか。気になる第3回の講義もきっとあなたにとってヱビスビールとともに彩りある時間となるその日まで。まずはヱビスで乾杯!
文・喜多布由子 写真・山本雷太
第2回ヱビスビアカレッジ 動画全編はこちら
00:00 | オープニング |
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07:00 | ヱビスのおいしい注ぎ方のご紹介 |
14:12 | ドイツから生中継!ヱビスの香り・味の決め手「ホップ」の秘密に迫る |